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第十八章;「龍犬」


 白龍のような犬を追う夢を観る。赤いベルトの中国時計の文字盤には、毛沢東の顔が描かれている。時計の針は6本。しかもそれぞれがバラバラに回っている。一体どれを見ればいいのやらさっぱりだ。A(エイ)という名の男と中国時計に埋め込まれたマイクを使って交信する。上海にある倉庫のような建物。ノイズが酷くてその声は殆ど聴き取れない。何とかして136番目の建物の入り口で合流する。「犬、そろそろ来るんじゃないか。人が集まらないうちに見届けたい」とAに云う。Aは僕の恋人で、互いに背格好がよく似ていた。傍らには別の女が寄り添っている。自分はその女の腰を抱いて、川の向こうに目を凝らしている。女は寒さに震え、時折こちらを見上げている。お互いの関係がよく解らない。イエローグリーンの川には幾つもの泡が浮かんでいる。やがて、左手から白く長い影が見える。どうやらやってきたようだ。目を凝らす。犬はくるくると空中を回転しながら、僕等の目の前へと降り立った。Aはすかさず犬の首を押さえつけ、顔面の皮を剥ぐ。犬は大人しくしている。Aは無言でナイフを十字に斬り、それから何カ所か穿つ。滴る鮮血の生臭い空気が周囲に広がる。一体何を始めようというのか。自分は指にきつくロープを巻きながら、黙ってそれを眺めている。何かの儀式だろうか?女の姿はもう何処にもなかった。空から紫の光が射し、犬の目を照らした。それは何か幸福そうな目をしていた。地上から一斉に何かが湧き上がってくるような感覚に包まれて目が醒めた。妙な朝だった。
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