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第八章;「空っぽの紙パックをゴミ箱に投げ込む」


 寝たら起きた。呼び出し音が鳴ったのでモニタを見ると、高校生くらいの男が腕を壁についてこちらを覗き込んでいた。……誰だこいつ?と思いながら、しばらくモニタを眺める。知らない人間だった。映像はモノクロだったが、男が金髪なのは判った。そのままぼんやり眺めていたら画面は真っ黒になった(自動的にオフになる仕組みだからだ)。腑に落ちない気分のまま台所に向かい、冷蔵庫のドアを開ける。葡萄入りの紅茶をコップに注ぐ──無くなった。空っぽの紙パックをゴミ箱に投げ込む。いつの間にか指が二箇所切れている事に気付く。久々にドラムン・ベースのトラックを幾つか選んで轟音で流す。4つ打ちの安定感と重低音が心地良い。ドラムンの爽快感は泳ぐのに似ている。フロアで一晩中踊っても疲れないのは、サイケやトランスやテクノとは明かに違う。同じエレクトロニカでこの差異は何だろうと不思議に思う。むしろユルいハウスに限って疲れてくる。あの夜明けの気怠さ──どうやら BPMだけの問題では無さそうだ。午後、オレンジ入りの洗剤で床を磨く。部屋中の床を磨いたら汗をかいたのでシャワーを浴びる。パスタを茹でる。ドライトマトでソースを作り、胡椒をひく。美味かった。が、明らかに大量に茹ですぎた。時間がやばくなってきたのでマシンの電源を落とし、Tシャツを着替えて帽子を被る。猫がウォレット・チェーンにじゃれて飛び付く。サイズの合わないデザインの気に入っている靴を履く。部屋を出て、チャリに乗る。信号待ちで、何だか途轍もない色をした夕焼けを見上げる(かなり見物だった)。ケータイを取り出し、撮ろうかと思ったがやめた。風を浴びていたら目にゴミが入る。コンタクトレンズを呪いつつ加速する。

 寝たら起きる。その繰り返しだ。何度眠っても眠かった。こういう時は何も考えず、枕に頭を埋めていようと思ってそうした。猫が呆れて何度か起こしに来た。週末は自転車で「渚」に向かった。空がなんか凄い色をしていた。写真を何枚も撮った。しばらく海岸に座って遠くに見えるビル群を眺めた。胡座をかいてぼんやり波音に耳を傾けていたら、何処からか犬が走ってきて傍らに座った。おまえ、何処から来たの?と話し掛けると遠くでカップルが「こらー!戻ってきなさーーい!」と叫ぶのが聞こえた。犬は一瞬そっちを見たが、周囲をぐるぐると駈け回っていた。「すみませーん。もう」と女の人が半分困ったような顔で云った。僕は何も云わず、笑ってペットボトルの水を飲んだ。それからカップルが去ってゆく瞬間、こっそりと写真を撮った。

 ──で、その写真がこれ。→nagisa.jpg*
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