logo
© harumaki
Copyright All Rights Reserved.
  

第一章;「町中の電線を指先で操る」


 寝たら起きた。さっきまでの出来事は夢だったのだ、と知る。背伸びをして寝返りを打つ。白い天井、白い壁──そういや夜はなんか風の音が聴こえてた気がするが、万年耳栓っていうか耳栓しないと眠れないので音はロクに聴こえてない。あの夢の後、屋根に跨って町中の電線を指先で操る夢を見た。屋根の下で5人の女がこっちを見上げて笑ってた。チャンダン焚きすぎて起きたら声が砂嵐になってた。父親の顔面にゲロを吐く夢も見た。父親は自分と同い年くらいになってた。やっぱり顔が似ていた。もしかしたら兄貴の夢だったのかな。実際の兄貴は三日で死んだけど。サイケとオペラとロックとフレンチの音がメッセンジャーで飛び交って、タイピングしすぎて手首と指がおかしくなった。やりすぎた。サルトル読んでたら「小説読むならパトリシア・ハイスミスにしろよ」と突っ込まれた。死んだ友達が好きな作家だった。本棚覗き込んで二人で熱心に話してる姿を憶えている。そういやあの時、あいつは庭に裸足で出て煙草吸ってたっけ。死者に会える町、というものが存在するならば、訪ねていけるのに。──どっかで幽かに風鈴の音がしてた。

 午後からはレイヴに行ってきた。伊豆にて開催のmetamorphose。開催の曇天と星空と霧雨と朝焼けをみた。夜通し音楽が鳴っていた。沢山の友達と再会してhugしまくって乾杯を交わした。知らない女の子とか外国人カップルと踊った。名前も知らないままバイバイと手を振って別れた。その連続だった。何かもうみんなずっと笑ってた。それを人は多分幸福と呼ぶ。遠くで灯りがチラチラ光ってて、目薬をさしたら全部乱反射した。キレーだな、このまま音になればいい。深夜、霧が降りてきて、ブレイクビーツから高速ドリルンベースへシフトする瞬間、灰色に染まったドームみたいな空に光が突き抜けて降り注いでいた。やばいなあと思いながら、空を見上げて踊った。林立するテントからはオレンジの光が芝生に散らばっていて、あちこちからチャンダンの匂いが漂っていた。椅子に寝そべって目を閉じながら轟音を浴びていたら、夢の世界に飛んだ。何の夢を見たかはさっぱり憶えていないけど、何か柔らかい印象だけは残っている。目が覚めた後、友達と4人でアナルセックスの話をした。フードエリアで散々ウロついた。二年ぶりのソフトクリームを舐めながら駐車場を歩いた。美味かった。温泉に入って、座敷で寿司を食べた辺りから記憶が曖昧で、帰りの車の中で鳴ってるミニマルテクノが一気に子守歌と化した。気付いたら新宿南口に立っていた。 ──ああ、此処はミライの住む部屋から徒歩5分の場所だ。何となく「下界に降りてきた」感じがした。迷ってから踵を返し、そのまま地下鉄に乗った。車両に淡々と響く連続音が昨夜聴いたミニマルテクノの4つ打ちの残響音と重なった。ただひたすらに眠かった。──で、そんな一日の写真がこれ。→metamorphose05*
>> NEXT PAGE
2style.net