ぬいぐるみ
「〜今日放課後、あいてる?」
「え?なんで??」
3時間目が始まる前の休み時間。
あたしは、一人がんばってさっきの数学の授業のノートを写してた。
そんなとき、いきなりあたしの机の上に座った男が言った。
いまどき珍しいおかっぱの男・・・平子真子・・・。
「別に、あいてるけど?」
「んじゃあ、いっしょにゲーセン行こか」
「うん。いいよ」
「よし。じゃあゲーセン行くで。絶対にドタキャンしんといてや」
そう言って、平子はスタスタと教室を出て行った。
「いったい・・・なんだったの?」
ドタキャンするなって・・・あんた・・・今まで友達に何回ドタキャンされたのよ・・・
それから放課後。
靴箱に向かうと、そこにはもうすでに平子が居た。
「遅いなー・・・もっとはよ、きいや・・・」
「うるさい、おきゃっぱ」
「おきゃっぱ言うな!」
平子が怒った姿が面白くてクスクスと笑ってしまった。
平子は不満そうな顔であたしを見る。
あたしは、靴を履き替えて平子と一緒にゲーセンに向かった。
ゲーセンにつくと、うるさい音楽と音が響いている。
あたしはあんまりうるさいところが好きじゃないから
あんまりゲーセンに来ないのに、なんで今日は来てしまったんだろう・・・
「あたし、あんまりゲーセンって好きじゃないんだよねー」
「なんで?」
「だってあたし、うるさいの好きじゃないんだもん」
「そうなんやー。まあ、あれをとったらすぐに出ればええんやしな」
「あれ?」
平子が指を差したのは、UFOキャッチャーだった。
その中に可愛い熊のぬいぐるみが入ってた。
あたしはあのぬいぐるみを見たことがあった。
「あれって・・・」
「おまえが前に、店で欲しいって言ってたやつや。
ちょうどゲーセンにあったから、これをとったら店で買うより安くつくやろ?
だから、これとるまでちょっと待っとき」
平子はニっと笑って財布から200円を取り出し、UFOキャッチャーに200円を入れた。
チャリン・・・チャラララーン
平子はあたしの欲しかったぬいぐるみをとり始めた。
ゆっくりと動いていくUFOキャッチャー
ウィーン・・・
「よっしゃ、ここや!」
平子はそう言うと、UFOキャッチャーの最後のボタンを押した。
ウィーン・・・・ガバ・・・・ガチャン・・・タラリラリーチャンチャン。
あたしの欲しかったぬいぐるみは、一発で取れてぬいぐるみは、平子の手で掴まれた。
「すっごい・・・一発で取れるなんて・・・」
「ーほら、受け取りー」
「あ!ありがとう!!」
くまのぬいぐるみを投げられ、あたしはそれを受け止めた。
ふわふわのくまのぬいぐるみはとっても可愛くて、取ってくれた平子にとっても感謝した。
でも・・・ぬいぐるみよりも、あたしのために、このぬいぐるみをわざわざ
取ってくれた平子が大好きなの・・・。
それからゲーセンを出て、自分の家へ帰る帰り道・・・。
平子とあたしは二人並んで歩いた。
周りからはカップルに見えるのかな?
「今日はありがとう、平子・・・今度あんたのためになんかあげよっか?」
「うーん・・・じゃあ・・・オレ・・・の愛が欲しいな・・・」
「え・・・?」
サラリと言った平子の答えにあたしは、虚をつかれた。
今・・・なんて・・・
「愛・・・?」
「そう。まあはまだオレのことあんま知らんと思うし
オレものこと全然まだよくわからん。だから最初は友達として付き合ってほしい。
それからお互い、好きになって、カップルになったらええやろ?」
「う・・・ん・・・」
「ま、の愛はもうちょっと先ってことやな」
ヘヘっと笑って平子はあたしの手をぎゅっと握った。
平子の手は暖かくて、冷たいあたしの手を暖かくしていった。
まだ・・・お互いよく知らない・・・
でも、あたしはこれから平子のこと知っていくつもりだし、平子もあたしをもっと
知ってほしい。
急ぐことなんてない・・・これからゆっくりとお互いを知っていって
好きになっていこう。
平子からもらったぬいぐるみは、部屋に飾っておくね。
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