2,3ヶ月前にあたしは市丸隊長から
シャボン玉の液と容器を渡された。
「お土産だよ」っと笑いながら隊長はあたしにくれた。


「隊長・・・・」


1ヶ月前、突然前世から死神代行と3人の人間がソウルソサティに来て
各隊長と戦っていた。その同時期に・・・藍然元隊長は殺された・・・けれど、結局は彼は生きていて
あたしたち死神の敵となって、虚の世界へと行ってしまった。


そして、その藍然隊長と一緒に行ったのが・・・・
あたしの隊長であった市丸隊長だった。

つい先日までは、一緒に仕事をして他愛ない話をしたり・・・
隊長と恋人同士だった。今まで当たり前に居た人が、今は敵に回って・・・もうあたしのそばにはいない。

あたりまえに居た人が居なくなるというのは
心にぽっかりと穴が開いたような感じになる。


ぼーっと自分の自室で隊長からもらった、シャボン玉を眺めながら
はぁっと深いため息をついた。


「隊長・・・このシャボン玉、あなたのところまで届きますか?」


シャボン玉をふーっと拭くと、窓の外にふわふわとシャボン玉は空へと飛んだ。
雨が降るソウルソサティの空にシャボン玉はもくもくと飛ぶ。
シャボン玉を見ながら、あたしは少しだけ・・・・先日のことを思い出した。


ちょうどあの日も・・・こんな雨の降る日だったっけ・・・




+                  +



『ちゃ〜〜〜んvvvvvv』

『なんですか、隊長。そんなご機嫌で・・・しかも暑いんで離れてもらえませんか?』


ベタっと市丸隊長は、あたしに抱きついてきた。
ここは二番隊の隊舎内の廊下・・・。
二番隊の隊員は忙しく廊下をドタドタと早歩きで歩いている。


あたしも書類の整理に終われてて、自分の顔ぐらいに積み上げられた
書類を抱えながら歩いているのに、ここの隊長は気楽にあたしに抱きつく・・・・
ちょっとは仕事をしろ!!と言いたくなる。



『隊長、なんですか?』

『ん〜・・・ちょっとちゃんに用があるねん。
ちょっと来て〜』

『ハイ?ってあーーー!!』


いきなり、市丸隊長に腕を引かれて、今まで顔のところまで山積みにされていた
書類が、あっという間に地面に散らばった。
それを拾おうとしたが市丸隊長にしっかりと腕を握られていたため、書類を拾えずに
ズルズルと隊長に引きずられながら、あたしは散らばった書類を泣きそうになりながら見ていた。

(後もう少しで提出だったのに・・・orz)





『・・・・で、隊長なんなんですか・・・あたしに用って・・・』

あたしは、眉間に皺を寄せて低い声で話した。
もう少しで出来上がる書類を床に散らばらせてしまい、それを拾うことさえも出来ぬまま
隊長の用事に付き合うことに・・・。なんだかあたし機嫌悪くなってきた。

隊長に連れられてやってきたのは、四番隊舎の中にある
人があまり使わないおどり場だった。
屋根からは、ザーザー降りの雨が地面に落ちて空からは大量の雨が降っていた。


『ん〜・・・・今日は晴れやったのに・・・なんで雨になるかな〜・・・』

隊長は困ったという表情で、頬をポリポリとかいて
サラサラの銀色の髪をくしゃくしゃとした。

いつもと態度が違う隊長に不思議な気持ちを覚えた。
何がそんなに困るんだろ。もしかして、仕事のこととか??
そう少し心の中で期待を抱いていると、隊長は口を開いた。


『いや〜、前にイヅルが現世行ったときにお土産で持って帰ってきた
シャボン玉あんねんけど、それをちゃんとしようかな〜って思ってん。
でも・・・雨やからあかんなー;』


苦笑しながら言う隊長にあたしは、頭を抱えてしゃがみこんだ。
その様子に隊長は少し驚いて、頭に?マークをつけながら「大丈夫?」っと言った。

ちょっと・・・隊長、シャボン玉をするために・・・
あたしを呼び出したのか・・・こっちはあなたの分までの仕事もしなくちゃいけないのに・・・
何考えてるんだ、この人は・・・orz


『・・・・まあ、今日は雨やからしゃーないな。ちゃんごめん。もう帰ってええよ』


カチン!!
もうあたしの堪忍袋はここでキレた。


『隊長!!シャボン玉を貸してください!』

『え?でも、外雨やで?』

『いいから!貸して下さい!!!』

『え、あ!』


隊長が、意味も分からずにシャボン玉の液が入った筒を取り出し
あたしは、シャボン玉を拭く帽を液につけてぶーーーーっとシャボン玉を拭いた。
雨の中勢いよく飛び出したシャボン玉はふわーっと膨れたが、雨によってパチンパチンと消えた。



『あ・・・・消えちゃった・・・・』

『あー・・・ほんまや・・・でもなんか、雨の中でのシャボン玉って不思議やな・・・』

『不思議、ですか?』

『うん、なんか僕は晴れてるときにするシャボン玉よりも
雨の中でシャボン玉の方がキレイに見えるねん』


いつもの何を考えているかわからない笑みを向けると思ったけれど
隊長は・・・どこか少し寂しそうに笑った。

あたしはあえてそこでは何も言わなかったが
隊長の手をいつの間にかぎゅっと握り締めていた。
その手がとても冷たかったのはあたしは今でも覚えている。


+              +


あの時隊長が言った『雨の日のシャボン玉はキレイ』
確かにそうだけど、やっぱり雨の日のシャボン玉はすぐにパチンと消えて
どことなく切ない。だからあまりあたしは雨の日にシャボン玉をするのは嫌かも・・・

もしシャボン玉があたしだとして、雨が隊長なら・・・
あたしは隊長にすぐに消されるのかな?
そう考えると切なくなった。



「でも、このシャボン玉はどうか・・・消えずに・・・隊長のところまで届きますように」


そう願いをこめて、ふーっとシャボン玉を飛ばした。
雨の中どこまでも飛んでいくシャボン玉を見ながら、あたしは隊長からもらった
シャボン玉の筒を持ちながら空を眺めていた。



恋とシャボン玉
(どこまでも、このはてしない空にシャボン玉を飛んでいて)
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